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「第116回 日本医史学会総会・学術大会(大阪大会)」での一般口演報告

演 題「相良元貞(相良知安の弟)のドイツ医学留学の足跡」

「第116回日本医史学会学術大会(大阪大会)」での一般口演を終えて(報告)
日本医史学会会員 相良隆弘(佐賀市)

 「第116回 日本医史学会学術大会」(大阪大会)が、平成27年4月25日~27日に「日本綿業倶楽部」(大阪市中央区備後町)を会場に開催されました。大阪大会で筆者は、演題『相良元貞(相良知安の弟)のドイツ医学留学の足跡』と題する一般口演を行い無事終了しましたのでご報告します。



 筆者の口演は、過去「第110回日本医史学会学術大会(佐賀大会)」(平成21年6月6日~8日:於アバンセ)での『特別講演』(『佐賀藩医 相良知安とドイツ医学』)以来2回目となりました。
大会は80本の一般演題が口演され、活発な意見・質疑が交わされました。

会場周辺には、緒方洪庵旧宅の「適塾」(中央区北浜)や国宝史料など貴重なる医学・薬学など史料約4万点を収集・蔵書する「杏雨書屋」(武田科学振興財団)、「除痘館記念資料室」及び「くすりの道修町資料館」(中央区道修町)などの医学・薬学史跡と資料館、さらに多くの医学・薬学関係会社が集中している船場地区で、豊臣秀吉時代から商都として大阪経済の中心地であります。江戸時代の船場は、全国各藩の蔵屋敷が立ち並び天下の台所を支えました。筆者は昼の休憩時間を利用して史跡や各資料館を見学できました。佐賀藩医相良知安の長兄相良寛斎(安定)は、安政5年(1858)2月8日に「適塾」へ入門し3年間蘭医学を学び帰郷して、佐賀藩医学校(好生館)指南役に就任しました。

緒方洪庵旧宅(適塾)

小曽戸明会長(北里大学)の『杏雨書屋(きょううしょおく)のコレクション』と題する会長講演に始まり、松木明知理事(弘前大学名誉教授)の『華岡青洲と麻酔』と題する基調講演で開始されました。

 「日本心臓ペースメーカー友の会」の機関紙『SSK かていてる』誌上にて、平成26年9月号(Vol45.No5)から平成27年1月号(Vol46.No1)にかけて連載して頂きました『特別寄稿 先祖相良元貞の足跡を辿るドイツへの旅―視察報告』の内容を、口演用に再構成してまとめたものを発表しました。
平成26年12月に「佐賀医学史研究会総会・研究発表会」が開催され、佐賀の皆様へ筆者が発表しました『先祖相良元貞(知安の弟)の足跡を辿るドイツへの視察報告―相良元貞とベルツ博士―』の演題内容を、口演時間が10分になるように短縮して再構成し、内容を圧縮してまとめたものです。ドイツへ医学留学した相良元貞の足跡を、出身地の佐賀のみならず全国へアピールして発表したいとの思いが動機でした。


筆者が配布資料として用意して持参した120部の資料は、初日には無くなっていました。筆者の口演は二日目の26日(日)で、スライド画像(33枚)をプレゼンしながら説明を進行しました。
口演は短時間の為、要領よくコンパクトに発表する必要があります。

発表のポイントは以下の通りでした。
① 相良元貞の人物と経歴(明治政府派遣第1回ドイツ留学生)
② ベルリン大学とライプチヒ大学アーカイブ(文書館)で調査した「学籍登録者名簿」の説明と内容紹介(受講科目・指導教授など)及び元貞の下宿跡の調査。
③ 病気療養中の元貞と主治医のベルツ博士との出会い及びそれが契機となってベルツは東京医学校へ招聘されたこと。元貞とベルツは、日独医学交流の架け橋の役割を果たしたこと。ベルツの生家・資料館・墓所の訪問。

しかし口演では説明時間が足らずに、後半はかけ足での説明し終了しました。
口演終了後の質疑応答では、相川忠臣先生(長崎大学名誉教授)が発言され、「明治初期のドイツ留学生は、病気罹患する者が相良元貞以外にも,

長崎や佐賀出身者に多くいた。元貞は多分肺結核だったのではないか。厳寒の冬や語学などで苦労していた。」との内容でした。
相川先生の意見の通りで、確かに留学生で日本の温暖地出身者(九州など西日本)が、厳寒の冬に耐え切れず病気に罹患する率が高かったのです。
貴重な意見でありフォローして頂きました。他には特に質問は無く座長の西巻先生が口演終了を告げられ終わりました。
会場の会員からは、「説明や画像が丁寧で判りやすく良かった」、「声もよく通り歯切れのいい口演でした」など、好評の声を多く頂き嬉しい限りです。
学術大会で全国へアピール出来て望外の喜びでした。


最終日の全口演が終了した後に、「市民公開講座」が開催され市民の皆さんが参加されました。公開講座は下記の通りです。
① 『道修町(どしょうまち)の今昔』深澤恒夫氏(くすりの道修町資料館長)
② 『近世大阪の医学―村落への浸透と継続』田中祐尾氏(大阪市立大学医学部)
③ 『漢蘭折衷の医学』町泉寿郎氏(二松学舎大学)

 今回学術大会へ参加した感想としては、全国の医学史の専門家とお会いし交流できたことです。数名の会員の先生から新たな知己を得ることが出来ました。
また筆者の大学時代の大阪在住の友人と40年ぶりに再会でき、旧交を温めたことも収穫となりました。
(了)

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